視界をよぎった摩訶不思議な造形に引き寄せられて、偶然にして初めて「ボーダーレス・アート」というものを目にしたのは、川口の「アートギャラリー・アトリア」においてでした。一瞥してその面白さが既存のものとは明らかに違うことに気付いたのですが、その訳をなかなかつかめずに、奇抜な作品群に見入りながら会場をめぐり続けたことを思い出します。…その訳とは、なんらかのハンディキャップを持つ人たちの作品だということでしたが、特色ある形態それぞれの唯一無二の叫びと純真さがグヮンと心に迫って来て、それまで学んだことの無いアートの一面を突き付けられたような衝撃を受けました。
それらは無垢だけど子どもの造形とは違う、というのは子どもはここまで作り込めないし飽きっぽかったりします。わたしもそうでしたが、作りはじめてから日毎にアイデアに対する情熱が小さくなっていき、今作っているものがだんだんとつまらないものに見えて来たりした。つまらないと感じたものを最後まで作り通すのは困難、というか無駄なことだとさっさと見切りをつけて、振り返りもしなかった。
だけど、これらはというと!粘土を米粒一粒一粒のように指先でひねり出してびっしりと林立させ、ゾワゾワとするようでいて純真さに心打たれる「顔」があった!「顔面をプツプツさせたら、さぞかし面白いだろう」、というアイデアは出る、としても実際に作れるかというと「人の心を動かす」ほどの密度を出す前に自分の心が折れそうだ。反復という途方もない手作業が人の心に強く食い込んでくるのは知っていたようで、実は知らなかった。わたしたちの回りはコストパフォーマンスばかりを考えたモノやコトでいっぱいだし、この日まで手作業の極致のような造形物をアートとして興味深く見たことがなかったからかも知れません…。11月5日へつづく(^^:)